育児・介護と両立しながら教員を続けるには 制度の違いと働き方の選び方
育児・介護と両立しながら教員を続けるには 制度の違いと働き方の選び方
子育てや家族の介護と教員の仕事を両立できるか悩んでいる方に向けて、公立と私立で根拠になる法律が違うこと、2025年の育児・介護休業法改正で変わった点、制度を使ってもなお難しいときの働き方の選び方を整理しました。
概要
子どもが生まれる、あるいは親の介護が始まる。そのときに多くの先生が最初に考えるのは「この仕事を続けられるだろうか」ということだと思います。
教員の仕事は、時間の融通が利きにくい部分があります。授業は決まった時刻に始まりますし、担任を持てば朝の会から放課後まで動きが固定されます。だからこそ「制度があるかどうか」より「その学校で実際に使えるか」が問題になりやすい職種です。
一方で、使える制度そのものは思っているより広がっています。特に2025年には育児・介護休業法が大きく改正されました。まず何が用意されているのかを正確に知り、そのうえで「いまの職場で回るか」を判断する——この順番が現実的です。
この記事では、公立と私立で根拠になる法律が違うことを押さえたうえで、制度の中身と、それでも難しいときの選択肢を整理します。
詳細
まず「自分にどの法律が適用されるか」を確認する
ここが最初の分かれ道です。同じ「教員」でも、育児・介護の制度の根拠になる法律が違います。
- 公立学校の教員 … 地方公務員です。育児休業は「地方公務員の育児休業等に関する法律」と、各自治体の条例に基づきます
- 私立学校の教職員 … 学校法人に雇用される労働者です。「育児・介護休業法」が適用されます
インターネットで「教員 育休」と調べると、この2つが区別されないまま書かれた記事が多く出てきます。自分に当てはまらない制度の説明を読んで判断してしまうのが、いちばん避けたい失敗です。まず自分がどちらかを確かめてください。
公立学校の場合
「地方公務員の育児休業等に関する法律」では、次のように定められています。
- 育児休業(第2条) … 職員は、子が3歳に達する日までの期間、育児休業をすることができます
- 育児短時間勤務(第10条) … 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する場合に利用できます
- 部分休業(第19条) … 小学校就学の始期に達するまでの子を養育するため、1日の勤務時間の一部(2時間を超えない範囲)について勤務しないことを承認する制度です
(出典: 地方公務員の育児休業等に関する法律 第2条・第10条・第19条)
部分休業は、教員にとって使い方が見えやすい制度です。朝2時間遅く始める、あるいは夕方2時間早く上がる、といった形になります。ただし、時間割の組み方と担任・分掌の配分は学校側の裁量です。制度が使えることと、無理のない時間割になることは別の話なので、早めに管理職と相談してください。
なお、休暇・休業の細目や、介護に関する制度は各自治体の条例・規則で定められています。自治体によって内容が異なりますので、必ず勤務先の教育委員会や事務担当部署の規程をご確認ください。
私立学校の場合
学校法人に雇用されている場合は、一般の労働者と同じく育児・介護休業法が適用されます。育児休業は原則として子が1歳になるまでの制度です(出典: 厚生労働省「育児休業制度」)。
公立と比べると育児休業の期間の考え方が違うので、公立から私立へ、あるいはその逆に移る場合は、この差を必ず確認してください。転職のタイミングによっては、想定していた期間が取れないことがあります。
そのうえで、学校法人ごとに法定を上回る独自の制度を設けている場合もあります。就業規則を見せてもらうのがいちばん確実です。
2025年の法改正で変わったこと
育児・介護休業法は2025年4月と10月に段階的に改正が施行されました。両立を考えるうえで関係が深いのは次の点です(出典: 厚生労働省「育児・介護休業法 法改正のポイント」)。
2025年4月施行
- 子の看護等休暇の見直し … 対象となる子の範囲が小学3年生修了まで延長されました。取得事由に「感染症に伴う学級閉鎖等」と「入園(入学)式、卒園式」が追加され、「引き続き雇用された期間が6か月未満」という除外要件も削除されました
- 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大 … 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求できるようになりました
- 育児のためのテレワーク等の努力義務化 … 短時間勤務制度を講ずることが困難な場合の代替措置に、テレワーク等が追加されました
2025年10月施行
- 柔軟な働き方を実現するための措置 … 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、始業時刻の変更、テレワーク等(月10日以上)、保育施設の設置運営等、養育両立支援休暇(年10日以上)、短時間勤務制度のうち2つ以上を講じることが事業主に義務付けられました
- 個別の意向聴取・配慮の義務化 … 妊娠・出産の申出時と子が3歳になる前に、勤務時間帯や勤務地、支援制度の利用期間などについて意向を聴き、配慮することが求められます
介護についても、介護休暇を取得できる労働者の要件が緩和され、介護離職を防ぐための雇用環境整備や個別周知が事業主の義務とされました。
注意していただきたいのは、これらは育児・介護休業法の改正であり、直接の対象は私立学校を含む民間の事業主だという点です。公立学校の教員に関わる制度は、国の法律の動きを受けて各自治体が条例・規則を整えていく形になります。自分の勤務先で何がどこまで使えるかは、必ず勤務先にご確認ください。
介護は「調べる時間がない状態」で始まる
育児は予定が立ちますが、介護はそうはいきません。ある日突然、入院や要介護認定の手続きが始まります。そして、その最中に制度を調べる余裕はまずありません。
まだ必要でないうちに、就業規則や自治体の規程で「介護に関する休暇・休業がどう書かれているか」を一度読んでおくことをおすすめします。読んでおくだけで、いざというときに動き出す速さが変わります。あわせて、勤務先の相談窓口がどこかも確認しておくと安心です。
制度を使ってもなお難しいと感じたら
制度が整っていても、負担が減らない場合があります。原因が授業以外の部分にあることも多いからです。
その場合、辞めるか続けるかの二択で考えないでください。間にいくつか選択肢があります。
- 同じ校種で、負担の構造が違う学校に移る … 部活動の運営方針は学校によってかなり違います。部活動の負担を減らしたい先生の選択肢で整理しています
- 勤務形態を変える … 常勤から非常勤へ、あるいはその逆。専任教諭・常勤講師・非常勤講師は何が違う?をご覧ください
- 一度離れて、落ち着いてから戻る … ブランクを経ての復職は珍しいことではありません。ブランクがあっても教員に戻れる?で道すじをまとめています
転職を検討する場合、求人票よりも面接で聞くことのほうが重要です。制度の有無ではなく運用を確認してください。育児短時間勤務を実際に使っている教員が何人いるか、部活動の顧問はどう割り振っているか、放課後の会議は何時に終わるか。この3つを聞けば、その学校で回るかどうかはかなり見えます。
聞きにくいと感じるかもしれませんが、両立を前提に採用したい学校ほど、この質問に具体的に答えます。答えが曖昧な場合、それ自体が判断材料になります。
まとめ
育児・介護と教員の仕事の両立は、まず「自分にどの法律が適用されるか」を確かめるところから始まります。公立なら地方公務員の育児休業等に関する法律と自治体の条例、私立なら育児・介護休業法です。ここを取り違えたまま調べても、正しい見通しは立ちません。
2025年の法改正で、子の看護等休暇の対象拡大や、柔軟な働き方を実現するための措置の義務化など、使える選択肢は広がりました。ただし制度があることと、いまの職場で無理なく回ることは別です。制度を確認したうえで、時間割・分掌・部活動の実態と突き合わせて判断してください。
それでも難しいときは、辞めるか続けるかの二択ではなく、学校を変える・勤務形態を変える・一度離れて戻るという道があります。
なお、制度の適用範囲や手続き、休暇の日数は、自治体・学校法人によって異なります。この記事の内容は制度の全体像を掴むためのものですので、具体的な手続きは必ず勤務先の担当部署、または管轄の自治体にご確認ください。